第一回小説風セッションログ

CAST

GM・シナリオ:ゴブリン

ノレージ:ゆも

トール:スエ蔵

トリル:mashu

ハンナ:うしお

イワン:雷華

 

 

深夜0時、ノレージはコムリンクの着信音で目を覚ました。

仕事(ラン)が入った。至急いつもの場所に向かってくれ。」

フィクサーはそれだけ告げ、一方的に通話を切断した。

「了解。」

ノレージはそう呟き、玄関を出た。

 

 フィクサーが言っていた"いつもの場所"というのは

ネオサッポロのスプロールに店を構える"フレンズ"ことだ。

メタタイプやSINに関係なく誰でも受け入れるこの店は

シャドウランナーや依頼主でいつも賑わっている。

 

店に入ると既に今回の仕事(ラン)のメンバーが集まっていた。

自分を含めランナーが5人と、依頼人が1人。

ノレージが席に座ると、依頼主と思われる痩身のエルフは口を開いた。

「俺を今日の夜明けまでに、ムロランへ護送してほしい。

 そのためにはシコツ湖を突っ切る必要がある、そこで君たちを雇わせてもらった。」

 

シコツ湖、ウワサには聞いたことがある。

あの周辺はヴァンパイアを筆頭とした覚醒生物がうろついている危険地帯だ。

あそこに足を踏み入れて二度と帰ってこなかったシャドウランナーは数多く居る。

 

「報酬は前金で2000新円、俺が無事にムロランに辿り着ければ追加で3000新円だ。

 移動用のヴィークルはこちらで用意した、これもお前たちにやろう。」

「わかった…引き受けるよ」

ノレージの隣に座っていたエルフのシャドウランナーが口を開いた。

シャドウランナーにしては明らかに小柄で華奢な体型だ。

お世辞にもシャドウランナーとしてやっていけるとは言い難い。

「ところで聞きたいんだけど、どうしてあなたはそんなに急いでいるんだい?」

「ワタシのボスは時間に厳格な人でね、少しでも遅れたら間違いなくハラキリだ。」

「そのボスってのは、一体誰なんだい?」

「それについて話すつもりはない」

「それは困るな、これからボク達はあなたの命を守らなきゃいけない

 ・・それに、君のスーツの襟についてる録音装置は止めてあるよ。」

「いつの間にそんなことを!?わかったわかった、正直に話すとしよう。

 ワタシはシアワセのネオサッポロ支部に潜入していた産業スパイだ。

 とあるブツを持ち出す予定だったが、少々手間取ってしまったんだ」

 

デッキを操作した様子もなかった。間違いない、彼はテクノマンサーだ。

そういうことなら、シャドウランナーとしてやっていける事にも合点がいく。

それに加え、交渉能力もかなり高いようだ。

 

「そのブツってのは具体的にはどういうものだ?」

端に座っていたヒューマンが尋ねた。顔色が良くなさそうだが、大丈夫だろうか。

「HMHVV、感染するとヴァンパイアなどに変異する危険なウイルスだ」

 

「それじゃあそろそろ出発しましょ、時間もあまり無いみたいだし。」

そう言いながら女性エルフのシャドウランナーは立ち上がり

物音一つ立てる事なく、店を後にした。他のメンバーも、その後に続いた。

 

 

「こちらで用意したヴィークルは4人用だ。他にヴィークルを持ってる奴はいるか?」

「ワタシが持ってるわ。依頼主サンに変装するから、二台に分かれて移動しましょ。」

依頼主が用意したヴィークルは現代(ヒュンダイ)シン—ヒュン、4人乗りのセダンタイプだ。

後部座席にアサルトライフルと機関銃が備え付けられている。

もう一つはアレス・ロードマスター。8人乗りの装甲車で、ほとんど新品だ。 

 

「・・こっちの方が堅そう」

今まで一言も話さなかった女性のドワーフはそう呟き

そそくさとアレス・ロードマスターに乗り込んでしまった。

「じゃあ俺はこちらに乗ろう」

顔色の悪いヒューマンはヒュンダイのヴィークルに乗り込んだ。

残りの他のメンバーは全員トレーラーに乗り込み、ネオサッポロから出発した。

 

「シコツ湖までは安全だろうから、この辺りで自己紹介でもしましょ。」

「じゃあ自分から・・名前はノレージ、UCAS出身のメイジだ。よろしく頼む。」

「俺はトール、見ての通りヒューマンだ。銃が必要になったら起こしてくれ」

「ワタシの名前はトリルよ、よろしく。」

「・・ハンナ。」

それだけ言うと、持っていたシールドの裏に隠れてしまった。

どうやら話すのは苦手みたいだ。

「えっ、終わり?あーーええっと、ボクはイワン。テクノマンサーだ。

 それでさっき、時間があったからマトリックスで調べてみたんだけど

 シアワセに潜入していた産業スパイが追われているって情報を見つけたよ

 彼の言っていることに間違いは無さそうだね。」

「ハンナも、マトリックスでシコツ湖の地図を見つけたよ。」

「おお!やるじゃないハンナ!」

「そろそろシコツ湖に入るぞ、気を抜くなよ」

 

「後方からヴァンパイアが接近中!撃つぞ!」

だが トールの弾丸はヴァンパイアの頬を掠めた。

すぐさまノレージは魔力破(マナボルト)を放ち、ヴァンパイアの身体は粉々に崩れ落ちた。

「助かったぜノレージ」 

「感謝の言葉はまだ早い」

 

何体かの覚醒生物を退けたところで、道を塞ぐようにシアワセ傘下の2人のヤクザと

2体のヴァンパイアが待ち受けていた。どうやら彼らは協力関係にあるようだ。

「急加速して奴らの不意を突くわ!掴まって!」

トリルはアクセルを強く踏み込んだ。

「アイツら正気か!ぶつかるぞ!」

「それに話に聞いてたやつが2人いるぞ!どっちが本物だ!?」

ヤクザがそう叫ぶと同時に、トールの弾丸がヴァンパイアの脳天を貫いた。

続けざまにノレージも魔力球(マナボール)を唱え、敵部隊は大混乱だ。

ヴァンパイアがトリルに飛び掛かり噛みついてくる

カメレオンスーツのルテニウムポリマー素材が、ヴァンパイアの牙を防いだ。

近くにいたハンナが、そのヴァンパイアの頭をぶん殴った。

「相手のヴィークルを乗っ取るよ!」

イワンはそう言うと、ARに接続し集中した。

「あぁっ、まずい」

彼がそう呟いたその刹那、敵ヴィークルに取り付けられた機関銃が叫び声をあげた。

機関銃は完全に制御を失い、無差別に攻撃を開始した。

「おい!何がどうなってやがる!」

「ごめん!しくじった!」

いくつもの弾丸が宙を舞い、命中したトリルは意識を失い。ヤクザの一人は即死した。

混乱の渦中、依頼主が最後の一人となったヤクザを撃ち抜き、敵部隊は全滅した。

「ホッカイドウ・スラングでいうところの、”ワヤ” ってやつだな。」

ノレージはそう独り言を呟き、先に進むことにした。

 

 

廃車寸前だった現代(ヒュンダイを放置し、ここからはロードマスター1台で向かうことにした。

「背後からヴィークルが1台急接近!人数は3!」

敵のヴィークルが背後につき、一人の男が身を乗り出して弓矢を放ち

矢がロードマスターのタイヤに命中した。

「間違いねえ、同業者だなあいつら。」

「他にハッカーもいるみたいだね、生体ペルソナにマークを付けられた。」

トールも同じように、敵ヴィークルのタイヤを撃ち抜いた。

「流石だな、トール」

ノレージはそう言いながら、敵のヴィークルを魔力球(マナボール)で包み込んだ。

「ハンナも相手のテクノマンサーにマークを付けたよ、通信を傍受してみる。」

ハンナが通信を傍受したところ、依頼主を捕らえるよう指示されているだけのようだ。

「ワタシ達のヴィークルの方が堅いから、そのまま車両をぶつけるわ」

トリルはブレーキを強く踏みこんだ。

「ぶつかるぞ!よけろよけろ!」

ハンナが傍受した敵の通信が車内に響き渡る。

しかし車両は衝突せず、すれ違いざまに敵の一人が跳躍し切りかかってきた。

「みんな掴まって!」

トリルは大きくハンドルを切って直前でかわし、敵の男は地面に激突した。

敵のヴィークルはブレーキを踏み、仲間を助けるために引き返した。

「今がチャンスだ!このまま撒くぞ!」

「ボクに付けられたマークは取り除いたよ、これで追跡されない。」

トリルはアクセルを全力で踏み込み、大きく距離を引き離した。

「これで仕上げだ。」

ノレージは集中し、ヴィークル全体に完全透明化()の呪文をかけた。

どうやら敵は完全にこちらを見失ったようだ。まっすぐムロランに向かおう。

 

 

「このあたりで降ろしてくれ、俺が君たちを雇ったと知られるわけにはいかない。」

「シコツ湖に置いてきたヴィークル、あれ報酬のうちに含まれていたと思うんだけど

 その分の埋め合わせとか、なんかないかな?」

「報酬は提示した物から変更するつもりはない、だが助かった。感謝はしているよ。」

依頼主はそう皆に告げると、ムロランの工場地帯に消えていった。

 

「シコツ湖に戻ってあのヴィークル回収しに行く?」

「いやあ、しばらくヴァンパイアは御免だ、安全な道で帰ろう。」

「それもそうね。」