Shadowrun 5th オンラインセッションログ 第一話

シナリオ名

Horizontal Effect/水平線効果

 

キャラクター紹介(プレイヤー - キャラクター)

避雷針 - ハリアー

肉体的には非力な女性だが優れた五感と霊視能力を持つアデプト。

その能力を生かすため個人探偵を営んでいる。

この能力が彼女の人生にもたらしたものは決して良いものばかりではないが

その全てを乗り越える精神的なタフさが彼女にはあった。

 

とかげマン - サトウ・フユコ

ミツハマの防諜担当者であったサトウ――あからさまな偽名――は汚い仕事や権力闘争の中を泳ぎ回ってきました。

汚いやり口でシャドウランナーを騙して使い潰し、同僚をハメて上司に差し出し、ヤクザの諍いを煽り立てて対立派閥のメンバーを暗殺し……。

ドブ色に輝かしい彼女の歴史は、結局の所自分自身もただの駒に過ぎないという

苦い教訓といくらかのサイバーウェア、そしてトラウマとストリートからの冷たい視線しか彼女にもたらしませんでした。

ただ、彼女はあらゆる薄汚い仕事のやり方と交渉術を心得ているためチームの顔役兼戦闘役としては良い仕事をするのには間違いありません。

 

雅 餓狼 - ベルディグリ

ストリート生まれであるベルディグリは、テクノマンサーの能力を持っていた。

その力をコントロールできず精密機器を破壊してしまい煙たがられストリートキッドやギャングの連中とは馴染めなかった。

現在は下請けのハッキングなどで生計を立てている。

 

NPC - セプテンバー

シアトルのフィクサーハリアーを含め多数のシャドウランナーと繋がりを持つ。

 

NPC - ジロウ

今回の依頼人、地域一帯の不法居住者をまとめている

 

 

 

 テクノマンサーであるペルディグリは、暗闇の部屋で目を覚ました。

 四肢は椅子に固定され、猿ぐつわをされ、声を上げることもできない。

 頭痛もする、思考がうまくまとまらない。

 

(うぐぐ、マトリックスにもつながってないのだろうか?)

ベルディグリは、とにかく何が起こったのかを思い出そうと意識を集中させた

 

(確か適当な自販機をハックするために……ストリートをぶらぶらしていて……)

 

そして室内は揺れエンジン音がする……バンか何かで移動中のようだ

(こ、これが伝説のはいえーす、かぁ)

と、どこかで見たネットスラングを思い出していた。

 

ベルディグリは生体ペルソナを起動し、マトリックスを観察した。

(コムリンクのアイコンが一つ、しかしえらく安物だなあ、それにこのヴィークルには誰かがリギングしているみたいだ)

 

シュー……

自身の背後から音が聞こえたと同時に、再びベルディグリは意識を失ってしまった。

 

 

 ほぼ同時刻、バゼット探偵事務所にて、所長であるハリアーにコールがかかる。

「はい、こちらバゼット探偵事務所」

ハリアーは電話に出ると、サトウはそれに気が付きこちらを覗き込む。

「あら、仕事ですか?」

サトウはソイカフを用意しながらハリアーに訊いた。

 

「お世話になっております、今お時間よろしいですか?」

セプテンバー、我々を含めて様々な人物と繋がりのあるフィクサーだ。

端正な顔立ちで物腰も柔らかい人物だが、どこか掴みどころがなく胡散臭い男だ。

 

「ええ、もちろん。ご用件を伺いましょう」

「あなた方に依頼が2件入っておりまして、お話をさせていただきたく」

ハリアーは目線と仕草で仕事の話だとサトウに伝えた。

サトウはハリアーの前にソイカフをすっと置き、後ろでニコニコと笑っている。

 

「2件もですか?とりあえず詳しいお話を聞きたいですね」

同時に2件という珍しい提案に、ハリアーは思わず訝しんだ。

 

「まず1件目は、行方不明となったテクノマンサーの救出です」

「そして2件目は、とある最新AIを盗み出していただきたいのです」

 

「ふーむ……その2件はどちらか片方のみ受けられる形で?」

「そちらにはマトリックスの専門化はいらっしゃらない思います」

セプテンバーは続ける。

「ですので、まず1つ目の依頼でテクノマンサーを救出していただきき、その後そのテクノマンサーと共に2つ目の依頼を行っていただきたい……という」

「ふむ……行方不明になったというのは、よくある誘拐なのでしょうか……」

「テクノマンサーということもり、何か事件に巻き込まれている可能性もあります」

「しかし、詳細は依頼人さまも不明とのことで……」

依頼人であるジロウさま本人に替わります、お待ちを」

数秒ほど通話が途切れ、依頼人と思われる人物に繋がる――。

 

「あんたたちがその…探偵の方かい?俺の名前はジロウってんだ、よろしくな」

「はい、バゼット探偵事務所のハリアーと申します」

「私(ワタクシ)はサトウとお呼びください」

 

「ベルディグリのヤローと連絡がつかねえんだ、最近だれかに見られている気がするだとか言っていたし、何か厄介ごとに巻き込まれてなきゃいいんだが」

 

(こんな相手からじゃどれくらい報酬がもらえるかわからないよなあ)

サトウはそう思ったが、ポーカーフェイスが崩れることは無かった。

 

「ふむ、ではベルディグリさんの外見や特徴などから教えていただけます?」

「14歳のヒューマン、一応男だが、女みたいにひょろひょろなヤロウだ、それに髪色は緑で、瞳は赤い……こんなところだな」

「だがハッキングの腕は確かだ、あんたらの力になってくれると思う」

 

 

「それと……彼を探した場合の報酬について教えていただけませんか?」

サトウはそう訊ねながら、依頼人の表情や仕草を細かく観察していた。

ハリアーもチラとサトウを見たが何も言わない。金勘定は彼女の方が得意だ。

 

「前金2000新円と、成功報酬として5000新円」

「仲間たちでみんなで持ち寄って、なんとかこの金額を集めたんだ」

表情は硬く、緊張している様子だがおそらく嘘は吐いていないだろう。

 

これ以上報酬をつり上げることは出来ないと踏んだサトウは、一つの提案を申し出た。

「人探しの相場よりは安いけど、手助けはできる。ただ、代わりにあなた達も私達のことを手助けして欲しい」

「ああ、俺にできることであればなんでも協力するぜ」

「ならば、ターゲットだけでなく、我々が次に行う仕事に協力してくださいませんか?それで報酬の件は貸し借りなしとしましょう」

「わかった、構わねえぜ」

ジロウは、背に腹は代えられないといった様子で、渋々了承する。

 

一呼吸おいて、 サトウは話を続けた。

「ちなみに、その"彼"が死体でも、発見できた場合は"成功"でよろしいですね?もちろん、死体であった場合最終的に私達も困りますので」

「そんなことあっては欲しくねえが、だとしても埋葬はしてやらんといけないからな」

「そのようなことがないように尽くしましょう」

 

数瞬の沈黙が流れた後、ハリアーが口を開く。

 「……ベルディグリさんが言っていたように周囲に怪しい人物を見かけたりしましたか?」

「正直言ってわからない……アイツには良かれと思って『気のせいだ、ビビりすぎだ』って言ったんだが、間違いだったのかもしれねえなあ」

と、ジロウはため息まじりに落胆した様子で話した。

 

この話を聞いたサトウは、ミツハマで活動していたころに得た情報を思い出し、ハリアーにメッセージを送信していた。

『昔の古巣がとも思いましたが、ネオネットもテクノマンサー狩りをやっているそうで』

『スプロールでもそういう噂が流れてたわね。まあおおむね黒ってことか』

『まぁ、私も狩りのやり方については一応知っているんですが……』

 

二人はメッセージでやりとりをしながら、ハリアーは質問を続けた。

「最近バンのような大型車を見かける頻度が多くなっていませんでしたか?」

「そうだな、俺は気が付かなかったが、あとで仲間に聞いてみるぜ」

ジロウはハリアーの目をまっすぐ見て答えた。

 

「そうだそうだ」

ジロウは少しわざとらしく、何かを思い出したような仕草をしながら話を続ける。

「セプデンバーさんに『アイツの衣服なんかがあるといい』って言われたんで用意したんだが、本当にそんなものが役に立つのか?」

「ええ、私はアデプトでして。嗅覚は警察犬並ですよ」

「さすが探偵さん!頼りになるねえ」

フィクサー経由で郵送しておいたんで、じきに届くと思うぜ」

「わかりました。ありがとうございます」

ハリアーがそう答えると、通話は切断された。

 

 

 一方その頃、ペルディグリは再び意識を取り戻した。

 何かの毒物によって気を失っていたようだが、効力が切れたようだ。

 

(なにか出来ることはないか?)

ベルディグリは心の中で言葉を反芻しながら、静かに目を瞑る。

そして生体ペルソナを起動し、電脳世界マトリックス没入ダイヴした。

 

(しかし、ノイズが邪魔だな)

テクノマンサーであるベルディグリにとって電脳世界マトリックスを操ることなど造作もないことだ。

ベルディグリは<レゾナンス・チャンネル>の複合体をスレッド編成し、ノイズを取り払う。

すると、電脳世界マトリックスに浮かぶ様々なアイコンたちが鮮明に映し出された。

 

(これでよし、まずは誰かに連絡を取ろう、助けてくれるかも)

思い当たる3人の知人に『はいえーすされた(さらわれた)』とメッセージを送信した。

 

返信を待つ間、電脳世界マトリックスを観察していると、とあるアイコンを発見した。

どうやら、一定時間おきに薬物――ニューロスタンIIIV――を注入する装置のようだ。

 

(むむ、とりあえずその機器をどうにかしないとまた寝ることになりそう……点滴機もハックして薬とめたいけど、薬が減ってないとバレるかなぁ……)

ベルディグリは点滴機のアイコンにマークを付け、偽命令を与える。

(投薬を10分おきから1日おきに変更っと…)

 

するとベルディグリの生体ペルソナ宛てにメッセージが届いた。

 

『ペルディグリ、無事なのか!?いま何処にいる?』

ジロウだ。スプロール一帯の不法居住者をまとめている人物で、皆から信頼されている。

車で路上生活をしている自分もよく世話になっている。

『あ、ジローさん。やほー、でも場所はわからないかなー、車(バンっぽい)の中でニューロスタンを点滴されて、しばられている』

『ってことは拉致されたってことか?お前なあ、もうちょっとこう……危機感ってものはないのか?』

『まー、いつかは来ることだと思ってたしねぇ。慌てても仕方ないよ^^それに車はまだ動いているみたい』

『お前言ってたろ、いつも誰かに見られている気がするってな……それでよ、お前に何かあったんじゃないかって思ってシャドウランナーを雇ったんだ、すぐ彼らが助けに来てくれるはずだ』

『わかったー、その人達にボクのコムコードを教えてあげて』

『分かった、待ってろ……』

 

 ジロウはハリアーとサトウにベルディグリのコムコードを添付したメッセージを送った。

『じゃ、よろしくね。助けを手配してくれてありがとう、ジローさん』

『それで1つお願いがあるんだが、もし無事助かったらお前を助けてくれた人たちに協力してやってくれないか?どうやら、お前のハッキング能力を高く評価しているみたいだぜ』

『んー、判った。もちろん手伝うよ、生身の力は死体並だってことは伝えておいてね』

『ああ、それじゃ切るぜ』

『はぁい、ホントありがと、ジローさん』

通話を終えたベルディグリは点滴機の残量情報を書き換えながら、次にやるべきことを考えていた。

 

 一方その頃、ハリアーとサトウはジロウから届いたメッセージを開いていた。

『ペルディグリから連絡があった、これでアイツの生体ペルソナと連絡が取れる』

『……ふぅむ。ベルディグリはどのように伝えていましたか?』

『何者かに拉致されて薬で眠らされたそうだ、今はどこかに移送されているらしい』

『ならば移送中に方をつけたいところ』

『いい加減な事をしている下請けなら楽なんだけど追手が来ることを考えてあえて穴を作る可能性も……』

サトウはかつて企業の陰謀に加担していた過去があり、少々偏執病的パラノイアックなところがある

 

「落ち着いてサトウ、まずは動いてみましょう」

ハリアーはサトウを窘める

「……はい、かしこまりました、ただコーポは目的のためには手段を択ばないパラノイアになるくらいじゃないとあの手の輩には対抗できませんので……」

そう続ける彼女にハリアーは思わずため息をつき、事務所を後にした。

 

「私はまず救出対象のベルディグリに連絡を取ってみるわ」

「では私は聞き込み調査を」

 

話を終えたハリアーはベルディグリの生体ペルソナにメッセージを送信した。

『はろー? どなたでしょうか?』

『あなたがベルティグリさん?私はハリアー、あなたの救出依頼を受けたランナーよ』

『ああ、ジローさんが頼んでくれた人なんだ』

『ええ、そちらの状況は今どうなってます?』

『縛られてて、喋れない、動けない。投薬はなんとかハッキングして1日1回にしたから少し余裕がある』

『あなた以外の人はどれだけ居る?』

『人はひとりだけど、この車両を誰かが外部から制御してるぽい』

『そう……ひょっとしたら別の車両もあるかもしれないってことか……』

『あ、人が一人っていうのは安物のコムリンクっぽい機器が1個ってことだよおねーさん。マトリックスしかみえないんだ、いま』

『落ち着いてみたら、そのコムリンクぽい機器をハッキングすれば位置は知らせれるかも知れないけど、その瞬間の位置になっちゃうね』

『そんな安物を?コーポがやるにしては雑すぎるような……孫請あたりの錬度の低い連中にさらわれてるのかな……?』

『不法住居者一人さらうのにそんなにコストはいらないと思ってるんじゃないかなー』

『できれば助かりたいし、余計なことしてランナーさん達の邪魔はしたくないから、ぼくがやっていいことあれば教えて欲しい』

『今は私の助手が周辺の聞き込みをしているわ、ベルティグリさんにも電子方面での探索をお願いしたいかな』

『わかった。ネタを教えてくれたら検索は出来ると思う。あと捕まった位置はストリートの自販機を荒らしにいく途中のこの辺だったよ』

そう言うとベルディグリは自身が拉致された大まかな座標をハリアーに送信した。

『なるほどね、近くまで行けたならあとは匂いでわかると思うから』

『に、臭いなの……』

『犬と同じくらい鼻が効くからね』

自慢げにそう話すハリアーに、ベルディグリは言葉を失う。

 

(ダメだ、このおねーさん判ってない……気にしちゃダメだ、気にしちゃダメだ)

不法居住者であるベルディグリはもう何日もシャワーを浴びていなかった。

だがそんな動揺を悟られまいと、彼は話を続ける。

『じゃ、じゃあ位置の確認をした方がいいかな移動していたらすぐ場所が変わるかも……だけど』

『そうね……ああ、おそらくだけどあなたをさらったのはネオネットだと思う。ネオネットの研究所を調べるのは良いかもしれない』

わかった、あとボクに注入されてた毒物はニューロスタンⅧだったよ』

『なるほどね……じゃあそろそろ私も動きます。ベルティグリさんも頑張って』

『はあい、ありがとう。ボクみたいなのを助けにうごいてくれて、アリガトウ』

『良いのよ、こういうのの積み重ねだからストリートで生きるって』

『じゃ、直接あえるのをきたいしてるよー』

 

 

 二人がメッセージで会話をしている頃、サトウは聞き込み調査を行っていた。

「とある人を探しているんですが……」

サトウは通りを歩いていた女性に話しかけた。

「あっ、この子!数時間ぐらい前かしらね、ガラの悪いギャングみたいな連中に眠らされて連れていかれるのを見ちゃったのよ、私」

ビンゴだ、最近の自分はツイている。コーポから縁を切って以来、自分の人生は良い方に向かっているという実感があった。

 

「数時間前……それはかなり最近ですね……ちなみにさらわれたのはどの辺りで?ギャングみたい、ということでしたが相手はどんな見た目でしたか?」

「オークで、とにかくガラの悪い感じだったわ、一言でいえば、チンピラ?」

 

そう聞いてサトウは一つのギャンググループの名前が脳裏を過った。

サイクロンナイン、強盗、恐喝、人さらい……ろくでもない集団だ。

彼らが関わっているとは言い切れないが、その可能性は高い。

 

「さらわれていたのは確か、自動販売機があるあの辺りよ、巻き込まれたくないと思ってすぐその場を立ち去ったからあまり覚えてないわ」

「いえ、助かりました、ありがとうございます」

 そう言うとサトウは浅めのオジギ――エシャク――をした。

 

 サトウはさきほどの女性が話していた自動販売機の付近に到着し

周囲をくまなく観察していると、メタリンクが一つ道端に落ちている。

超安価で有名なコムリンクだが、故障しており電源は入らない状態のようだ。

サトウは慣れた手つきでそれを証拠品袋にしまうと、これまでに得た情報をハリアーのコムリンクに送信した。

 

『了解。こちらはベルティグリさんとの連絡が取れました。

 以降マトリックス関係の調査は彼におまかせできます』

ハリアーはサトウにメッセージを送り、ベルディグリにもギャングの情報を送信した。

 

『くれぐれもお気をつけを。何年か前の話ですが、誘拐されたテクノマンサーを追いかけてきたランナーをターゲットに意図的な情報漏えいを行った、ということがありました』

『ええ、肝に銘じておきます』

『ターゲットはデストラップに引っかかりましたから。常に罠がないか確認を……』

 

メッセージを送りあううちに自動販売機付近に到着したハリアーはサトウを一瞥し、物理世界とアストラル世界のどちらもくまなく観察した。

「ヴィークルのタイヤ痕が残っている、少々荒い運転をしたみたいね……それに魔法的な痕跡は無し……と」

そう呟きながらコムリンクで写真を撮影し、ベルディグリにメッセージを送る。

 

『タイヤ痕から追跡できるかもしれない。あと車両に詳しい知り合いはいる?』

『ごめん、いないなー、そうだおねーさんたち、ボクのおうちつかうならどーぞ』

ベルディグリは軽自動車――ジャックラビット――で寝泊まりをしており、どうやらそれのオーナー権を渡すから使ってくれ、という事のようだ。

 

そのメッセージを受け取ったハリアーとサトウは、ジャックラビットへ向かうのであった。

 

To Be Continued...